第21期竜王戦第7局、羽生名人-渡辺竜王-8


先手
羽生名人
対局者後手
渡辺竜王
手番

+2
駒割歩2
-2
5攻撃陣4
5守備陣4
12合計6
急戦矢倉
中盤戦42手目

一日目終了。
ともに永世竜王がかかる最終局という大一番で、羽生が良いところ無く敗れた戦型を再び指向し、渡辺がそれを受けて立った。羽生が手を変え、そこで渡辺がおそらくは温めていたであろう新手で応じた。羽生が大模様を張る盛り上がりで対抗し、さらに歩切れになっても香車を取りに踏み込んだというのが一日目の流れだ。
ここで既に大きく差がついていてもおかしくはない局面である。


手羽生の方は、
攻撃陣は、飛車角2筋をにらんでいて、さらに香車の入手が確実。とは言えこれだけで攻めるのはまだ手駒が足りない。持ち駒の歩がないと攻めの幅が広がらないのだ。▲4八銀、▲2九桂といった駒の応援が間に合うだろうか。現段階では活用の可能性は少ない。
守備陣は、玉の周りに金銀があるといっても上部に広く、これ以上堅い囲いにはなることはない。▲7九玉▲8八玉としても良くなったのかどうか、手の価値が低そうだ。例えば▲5九銀と引くと囲いとしてはしっかりしてくる感じなのだが。それはなさそうだ。
狙いとしては、さらに盛り上がりを見せて後手の動きを誘いたい。歩がなければ位を維持することもできないからだ。陣形の懐の深さを活かす展開になればよい。香を拾って▲5九香で攻めを牽制するのは当然視野に入れておくべき手だ。


後手渡辺の方は
攻撃陣は、飛車角銀桂が攻めに使えそうで、持ち駒の歩も大量にある。攻め筋の幅が広く、どこからでも手を作れそうだ。
▲4六角もかなり良い位置だが、△8四角も矢倉崩しにもってこいの好位置。角のにらみを活かした攻めを是非考えたい。
守備陣は、△6一金が離れているが一応△3三銀△3二金の片矢倉に収まっていて、安定はしている。△4三歩型のおかげで隙の少ない低い形になっているのが大きい。△6一金を戦いながらじわっと引き寄せる展開になればかなりよさそうだ。
狙いとしては、攻め駒が多いため攻め筋の幅が広く、先手の金銀が盛り上がっている形の隙をどうにか突いてやれば楽によくなりそうだ。こういう形では無理矢理でも駒交換をしてやれば自然と良くなってくる。

形勢は、方針のわかりやすく、攻め筋の多いのは後手渡辺。駒を交換してやれば、振り飛車戦でよく言う捌けた形になるのでおそらく振り飛車党なら後手を持ちたいと思う人は多いだろう。後手の攻めを受け止めるのはかなりしんどそうだ。
と言いながら自分は大模様を張る先手持ち。後手の攻めは一番厚いところを狙っており受け止められれば良さそうに見える。こういう大模様を張る指し方は空中分解するのが怖いのだが、駒の効率的にそうそうばらけそうにはない。▲4六角が安定しているのも大きい。あとはどうやって歩を取りに行くか。


封じ手予想と言うか、▲9一ととしなければ顔が立たない。問題はその先で△5四銀▲5九香△5五歩とするのだろうか。それなら▲7七桂か。もう少しもたれて指したいのでひねりたいところと思う。