第21期竜王戦第4局 羽生名人-渡辺竜王-7


先手
羽生名人
対局者後手
渡辺竜王

手番

0
駒割
0
3攻撃陣7
6守備陣4
9合計11
相掛かり
中盤戦47手目

一日目はここまで。
7五で歩がぶつかったまま11手が過ぎた。こういうところにも強い人の将棋というものが現れている。


局面を眺めてみて、目につくのは羽生陣の鉄壁さであろう。金銀の連結と密集は盤面で最も目につく。この囲いは堅い。攻め駒は飛車角のみ。なんとも現代将棋ではないか。この羽生陣のように、守りを堅くして、攻め駒は最小限に留めるというのは現代将棋の体現と言える。
渡辺陣は守りを最小限にして、前のめりに攻め駒が進んでいる。二枚銀に二枚桂、端歩を突き合っているので香車も攻めに使えそうだ。これは攻め偏重の過激な作戦だ。こんなものがタイトル戦で出るとは、いつ以来なのだろうか。
現代将棋の寵児、渡辺明竜王が前時代的な「勝ちにくい形」を採用し、年長の羽生善治名人が典型的な現代将棋の「勝ちやすい形」を選んでいる。これは実に興味深い。これまでの竜王戦の三局は、渡辺らしい、現代将棋らしい指し方をしてきた渡辺明竜王が三連敗して、がらりと指し方を変えてきた。対局者を隠して局面を見れば、先手が渡辺だと誰もが断じるだろう。そう考えるとさらに興味深い。渡辺が何を思ってこういう将棋にしたのだろうか。


また、羽生が角交換で一手損、銀の移動で2筋を経由して遠回りで▲6七銀としているので二手損、合計で三手損しているのが興味深いところだ。封じ手局面では羽生陣の攻め駒が立ち後れているが、それは渡辺の守りと見合いなのでこれぐらいでもそれほど問題はない。羽生の攻めと渡辺の守りが同等。羽生の守りと渡辺の攻めが互角で拮抗している。すると、この羽生の三手損がどこに消えたのか。後出しじゃんけんのように局面の主導権を握れたというほどでもない。
一つの見方としては、羽生は手損をしたおかげで、345筋の歩を突かないで済んでおり、角の打ち込みに備えた低い陣形を結果的に実現できている。角換わり腰掛け銀のような戦型を想像すればわかるように、これらの歩を突くと角の打ち込みに備えて玉型を堅くすることができず、右金を残しておかねばならない。それがこの封じ手局面では金をすりよせることができているのは注目に値するだろう。


攻めでは渡辺、守りでは羽生。
形勢はどちらとも言えないところだ。もう少し羽生側の攻めの形が整っていれば羽生良しなのだが。おそらく羽生の方が指しやすい局面だとは思う。だが、のびのびとさせている感じではないだけに、渡辺が勝ちそうな気がしてならない。


封じ手予想は△9五歩。一点押しで。ここまできて全面戦争を避けるわけにはいかない。半端なことをすればカウンターで一撃くらって終わりだ。端を突き捨ててから攻めの体勢に入りたい。局面のポイントは攻めに使いにくい△3三桂△4四銀をどう攻めに組み込ませるかだ。双方の手持ちの角がどこで使われるかも見ておきたい。△5四角のラインは考えておきたい手段だと思う。羽生の反撃は端から手をつけるのだろうとは思う。
自分は羽生の方を持ちたい局面だとは思うが、手の流れ的に渡辺の方が勝ちそうな気がしてならない。