第34期棋王戦第5局久保初タイトル獲得


佐藤の反撃もむなしく、久保がばっさりと佐藤を切り捨てた。
久保のゴキゲン中飛車に対して、佐藤が6筋位取りの趣向を見せたがそれを上回る久保の端攻めで大勢が決した。

これで、久保は五度目の挑戦にして初めてのタイトル獲得である。今までの4度は全て羽生善治に退けられてきただけに今回佐藤が相手で気持ちが楽になったのかもしれない。久保は今期勝ちまくっていてこれで49勝24敗。対局数がその充実ぶりを物語っている。とはいえ具体的に形になったのはこの棋王だけ。年度末をしめくくるよい勝利だったと言えるだろう。

しかし、本当におもしろい棋王戦だった。佐藤のオリジナリティあふれる序盤感覚と、久保の定跡への新機軸がぶつかり合い、作戦を立て合うおもしろさがかいま見えた。敗れたとはいえ、佐藤の将棋のおもしろさを存分に見せつけたタイトル戦だった。7年ぶりの無冠だが、すぐにまたタイトル戦に出てくるだろう。心配してはいない。

棋王久保の快進撃がこの先どこまで続くか楽しみだ。

第34期棋王戦第5局佐藤-久保-3

先手
佐藤棋王
対局者後手
久保八段

手番
飛香
-1
駒割角銀
+1
4攻撃陣6
4守備陣3
7合計10
ゴキゲン中飛車対6筋位取り
中盤戦61手目


久保が端から攻め込んだ。
駒の効率が段違いで、佐藤の囲いの逆側から攻めていて、久保の作戦巧者ぶりが明らかになった。
久保は、攻め駒の配置も理想的で、守備陣もしっかりしていて、駒得もしている。そして手番も握って攻めている。これは久保がはっきり優勢だ。
ただ、佐藤も持ち駒の飛車を打ち込む楽しみが残っている。だから久保は攻めるだけ攻めて形を決めてから自陣に手を入れることになるのではないだろうか。
佐藤はせっかく取った6筋の位が役に立ちそうにないところが哀しいところだ。

第34期棋王戦第5局佐藤-久保-2

先手
佐藤棋王
対局者後手
久保八段
手番

0
駒割
0
3攻撃陣5
5守備陣3
8合計8
ゴキゲン中飛車対6筋位取り
中盤戦43手目


久保が角を据えて△9二香と上がった。
△9一飛と回って端攻めを見せておく。振り飛車側からすぐに動くよりは、佐藤に攻めさせてその反動を利用して攻めたい。

佐藤の方が選択肢が広く指しやすそうな感じだ。

第34期棋王戦第5局佐藤-久保-1

先手
佐藤棋王
対局者後手
久保八段

手番

0
駒割
0
3攻撃陣3
5守備陣3
8合計6
ゴキゲン中飛車対6筋位取り
中盤戦41手目


本年度最後の大勝負。
佐藤康光棋王久保利明8段の棋王戦、2勝2敗のタイで迎えた第5局。佐藤にとって虎の子の棋王と、久保の初タイトルを争う大勝負だ。


局面はゴキゲン中飛車対6筋位取りへ。
位取りという戦法は、位をとってじっくりとした戦いに持って行き、最後は位の圧力で押し倒すというのが狙いである。対振り飛車では5筋位取りと玉頭位取りの二つの戦法が有力で、昔はよく指されていた。
位取りの中で、5筋、7筋の位よりも6筋の位をとるのが良く、6筋の位をとって安定すれば作戦勝ちだ、と言われていた。それで6筋の位を振り飛車は決して取らせないように工夫していて、そのため逆に6筋位取りの定跡は存在しないということでもある。
この局面はそれがすんなりと実現していて、その意味で居飛車は不満がない局面だ。ただ、振り飛車も銀冠に組めていて、これで不利とは思わないだろう。
互角の局面だ。
後手の△3二金が鍵となる駒で、どう働くかが優劣を決めそうだ。

松本博文米長邦雄問題9

2週間、三次元空間での諸々に追われて離れている間にいくつか動きが出てきました。この問題の周辺で重要な事柄が進展を見せており、もはや、この問題だけに特化して追いかけることは不可能です。

現在将棋連盟という組織は、公益法人に関わる法律の改正などの要因により変革を迫られているようです。内部でも様々あるのでしょうが、我々に見える部分では先日お伝えした、「将棋世界誌を含む日本将棋連盟出版物が毎日コミュニケーションズへ委託」などの形となっているようです。



松本博文米長邦雄問題8で中継記者ごとげん氏の書き込みについて触れた。その動きに合わせるように、[読書][将棋]みるにみかねて暗躍(★さやかの梔子(KUCHINASHI)ブログ★)というエントリーが立った。

さいきんブログやコメント欄などで「なぜ、名人戦中継以降のゴタゴタについて棋士は何も言わないんだ! 絶望した!」という意味の文章をよく見かけるのですが、それはちょっと違うと思うのですよ。

  1. 棋士が書くことが将棋界のためになりますか?
  2. 棋士もインターネットに書かれていること以上は知らないかもしれない
  3. ★なぜ「サイトに書かれていることが全て」だと?

と三点を挙げて丁寧に述べている。
加えてかがさんなりの解決策を示している。長文だが、コメント欄も併せてじっくりと心に納めたい。


3月19日の順位戦B級2組の一斉対局において中継関連のトラブルがあったようだ。各所の情報を合わせてみると、関西将棋会館で行われた5局は凛記者が行ったが、東京将棋会館での7局は「名人戦棋譜速報事務局」の名義で行われた。東京将棋会館の中継が遅々として進まず、急遽、中継記者数名が応援に駆けつけた。東京は片上五段、銀杏記者、桜木記者、烏記者が、大阪は翔記者が加わったようだ。

松本氏がエントリーをたてている。

B級2組順位戦最終局。1年をかけておこなわれる各クラス順位戦はこの日をもって、全日程終了となる。ただし自分は依然圧力継続中につき、中継を担当することができない。この日はいろいろと事情が重なって、朝、東京・将棋会館にはレギュラーの中継記者がひとりもいない状態だった。自分は2003年にこの仕事を一人で担当し始めて以来、無理できるだけ無理をして、どうしても手が回らなければ無理を言って人に頼むなどして、中継に穴を開けないように手を尽くしてきた。それが自分の誇りでもある。最近は若い後進に任せていることが多いけれど、手が足りないとあれば必ず参戦する用意はする。しかし今回はそうもいかない。そうして午前中の中継サイトを見ていると、どうにもやりきれない気分だった。

長い一年の終わりに(松本博文ブログ)


女流棋士会から、LPSAへ送られた文書がどうなったのかについては明らかになっていない。

代表理事の責任に於いて、情報をオープンにして世論に是非を問うて頂きたい。(返事。中井さんへ | さわやか日記)

と米長氏自身が言っているのだから、返事が来たのならばそれを、来なかったのならばその事実を公開するものと思っていたのだが。

米長氏の日記で、「伝統文化は法律に勝る」仲間たち(さわやか日記)という言葉を件の問題と関連づけている人が多いのだが、これは公益法人法改正という問題に日本将棋連盟が負けないという意味ではないのだろうか。米長氏の文章は論理的に必要充分でないため、いくらでも前後を補って解釈できるところが実に脇が甘く、と同時に狡猾であると思う。



最後に、中継記者であるごとげん氏(烏記者)のコメントを紹介しておく。

青葉記者の目的が現場に戻ることのみだったら、周囲の動き方も変わってきます。現状はもっと様々なことが絡み合ってきているので、何がプラスになるか判断しかねる(できない)のです。
もうすぐ(お仕事ブログ)


そろそろタイムリミット。
他に書きたい記事もあるが、残りは次回。

近況報告

昨日ようやく三次元空間におけるX-dayを乗り越えました。無事に四月が迎えられそうです。まあ来週はまだ残務処理ですが。
件の問題関連で、この2週間ほどで興味深いことがいくつか起こっているようですが、更新は明日にしようと思います。
はなはだ簡単ですが、報告まで。

将棋世界誌を含む日本将棋連盟出版物が毎日コミュニケーションズへ委託

4月より、日本将棋連盟が出版してきた単行本、将棋年鑑、そして日本将棋連盟の機関誌である将棋世界誌を、毎日コミュニケーションズへ委託する、とのこと。

連盟出版部の二階堂さんが挨拶に来られた。4月から将棋世界毎日コミュニケーションズから出るとのこと。というより連盟の出版物(単行本や将棋年鑑など)はすべて毎コミに委託される。こちらの対応はほとんど変わらないが、将棋連盟、毎コミは大変だ。赤字部門を切り離して健全経営にしようということなのだろう

将棋よろず屋の徒然日誌3月12日(木)田楽(大宮将棋センターのホームページ)